ナラティブアプローチとは? - 職場の対立も解消できる新しい方法

カウンセラーとして私たちがクライアントとの関係を築く際、最も大切なのは信頼関係の構築です。クライアントが自らの悩みや問題を打ち明けることは、容易なことではありません。その背景や状況、感情を理解し、共感することで、クライアントとの間に深い絆を築くことができます。ナラティブアプローチは、そのような信頼関係を築く上で非常に有効な手法となります。

職場においても多様な個性を持つ人々がおり、彼らがそれぞれの役割を果たす中で、部署や従業員間で利害の対立が生じることがあります。このような対立を解消するための新しい手法として「ナラティブアプローチ」が注目されています。

ナラティブアプローチの概要

ナラティブアプローチは、物語を通じて問題を解決する手法です。相談者が抱える問題や悩みを物語として語り、その中から考え方や思い込みを明らかにし、問題解決の方向性を探る方法です。

ナラティブアプローチの背景

従来のカウンセリングやセラピーでは、相談者と支援者の間に力関係の差が生じることがあった。このような状況下では、相談者が真の自分を表現することが難しく、また、支援者の提案する解決策が相談者に合わない場合も多かった。

ナラティブアプローチは、この問題を解消するための方法として登場しました。このアプローチでは、支援者は専門性を手放し、相談者の物語に寄り添うことで、最善の解決方法を模索します。特に、ナラティブアプローチにおいては、人生脚本の書き換えを自然な形で促していくことがLSH(Life Scenario Healing)の基本姿勢となっています。

ナラティブアプローチの実践方法

ナラティブアプローチの実践には、ドミナントストーリーの傾聴、問題の言語化、反省的な質問、例外的な結果の発見、オルタナティブストーリーの構築などのステップが含まれます。

ドミナントストーリーとは

ドミナントストーリーは、相談者が自らの経験や認識を通じて形成してきた主観的な物語のことを指します。これは、相談者が自分の人生や問題をどのように認識しているか、どのようなフレームで物事を捉えているかを示すものです。

オルタナティブストーリーとは

オルタナティブストーリーは、ドミナントストーリーとは異なる新しい視点や物語のことを指します。これは、反省的な質問や例外的な結果の発見を通じて、相談者が新しい視点や気づきを得ることで形成される物語です。

禁止令の解除と人生脚本の修正

ナラティブアプローチは、相談者が持つ「禁止令」や制限的な信念を直接的に修正しようとするのではなく、物語を通じて自然とその制約を超えていく方法を提供します。禁止令とは、自分にとっての「できない」「してはいけない」といった制約や限界を意味します。これらは、過去の経験や他者からのメッセージに基づいて形成されることが多いです。

従来のカウンセリングやセラピーの方法では、これらの禁止令や制限的な信念を無理矢理にでも修正しようとするアプローチが取られることがありました。しかし、そのような強制的な方法は、相談者の抵抗を生むことが多く、真の意味での変容や成長を促すことが難しいという問題点がありました。

一方、LSHで推奨するナラティブアプローチでは、相談者の物語を中心に置き、その中での気づきや新しい視点を通じて、禁止令や制限的な信念を自然と解放していくことを目指します。具体的には、反省的な質問やオルタナティブストーリーの構築を通じて、相談者自身が自らの制約や限界を再評価し、新しい物語や視点を受け入れることで、禁止令を超えていくプロセスをサポートします。

このアプローチにより、相談者は自らの制約や限界を乗り越え、より自由で豊かな人生を歩むことができるようになります。

ナラティブアプローチのメリット

ナラティブアプローチのメリットには以下の点が挙げられます:

  1. 関係が良好になる:ナラティブアプローチでは、話を聴く側の人は助言や指導をする立場ではなく、対話を通して問題解決を図るため、コミュニケーションが深まり、相談する側とされる側の間で良好な関係を築きやすくなります。
  2. 解決策の幅が広がる:相談者は、投げかけられる質問を通じて今まで見えていなかった視点を得られます。視野が広がると、解決策の選択肢も増やせます。単純に助言を受けるだけではないため、解決方法が相談される側の知識や経験に偏るリスクも避けられます。
  3. 解決策を能動的に実行しやすい:ナラティブアプローチで見出したオルタナティブストーリーは、与えられるものではなく相談者自身で気づくものです。自分の内側から導き出された解決策は、与えられたものに比べて納得感が高まるため、行動に移しやすくなります。

また、職場においてナラティブアプローチを取り入れることで、職場の対立を解消し、上司と部下の関係性を改善し、新しいアイデアを生み出すことができます。

ナラティブアプローチのコツ

ナラティブアプローチを成功させるためには、自分の正当性を手放し、相手の話を受け入れること、お互いの立場を理解すること、妥協点を模索することが重要です。

ナラティブアプローチを成功させるためのコツには以下の点が挙げられます:

  1. ドミナントストーリーに耳を傾ける:相談者が語る主観的な物語、ドミナントストーリーを真摯に受け止めることが大切です。相談者の言葉をそのまま受け入れ、途中で否定やアドバイスをせず、相談者の感じている世界を共有することが重要です。
  2. 問題を外在化させる:相談者が語る物語を客観的に見るアプローチをとります。相談者が主役として語るストーリーを、観客としてどのように捉えるかを考えることで、問題の捉え方を変えるきっかけを作ります。
  3. 質問を投げかける:問題を外在化した後、反省的な質問を通じて、問題を別の視点で捉え直すことができます。具体的な質問を通じて、問題の原因を相談者自身に考えさせることがポイントです。
  4. 例外的な結果を導き出す:悩んでいる問題が常に起きているわけではない場合があります。例外的な結果を導き出すことで、望む結果に繋がるヒントを得ることができます。
  5. オルタナティブストーリーを作る:例外的な結果をもとに、元のドミナントストーリーを上書きし、新しいストーリーを構築します。新たに得た視点や気づきを踏まえて、問題の捉え方を再構築します。
  6. ヒーローズジャーニーを学ぶ:ヒーローズジャーニーは物語の構造の一つで、主人公が困難を乗り越え成長していく過程を描くものです。ナラティブアプローチにおいて、このヒーローズジャーニーを理解しておくことで、相談者の物語をより深く理解し、適切な質問やアプローチをする手助けとなります。

これらのコツを活用することで、ナラティブアプローチをより効果的に実践することができます。

まとめ

ナラティブアプローチは、対話を中心とした手法であり、相手の話を受け入れ、自分の考えを共有することで、職場の課題を解決するきっかけを作ることができます。

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