2.1 愛着スタイルの形成
2.1.1 幼少期の親子関係と愛着スタイルの関係
私たち人間は、生来、安全を求める存在です。特に幼い頃は、親や保護者の存在が、安全と安心の基盤となります。この基盤が、愛着と呼ばれるものであり、愛着スタイルは、幼少期に親との関係を通して形成されます。
ジョン・ボウビーの愛着理論によると、親との安全で安定した関係を通して、子供は安全基地を獲得します。安全基地とは、不安や恐怖を感じた時に、安心して戻ることができる場所、すなわち親の存在のことです。
安全基地がしっかり構築されれば、子供は探索的になり、世界を積極的に学び、成長していきます。一方、親との関係が不安定だったり、親が子供のニーズに適切に応えられなかったりする場合、子供は不安定な愛着スタイルを形成する可能性があります。
2.1.2 愛着スタイルが成人期に及ぼす影響
幼少期に形成された愛着スタイルは、成人期においても私たちの思考、感情、行動に大きな影響を与えます。
- 安全型愛着: 安定した人間関係を築きやすく、信頼や親密さを大切にする傾向があります。
- 不安型愛着: 常に相手に愛されているのか不安を感じ、愛情を求める行動をとることがあります。
- 回避型愛着: 人間関係を避ける傾向があり、親密さを恐れたり、感情表現を抑制したりします。
- 混乱型愛着: 愛着の対象に対して不安定で、予測不能な行動をとることがあります。
2.2 愛着障害の理解
愛着障害は、幼少期の愛着形成における問題によって引き起こされる、人間関係における深刻な困難を特徴とする精神的な状態です。
2.2.1 回避性愛着障害
- 特徴: 人間関係を避ける傾向があり、親密さを恐れます。感情表現が抑制され、他者への依存を避けようとします。
- 原因: 親が子供の感情的なニーズに無関心であったり、子供の感情表現を抑制してきた場合に起こりやすいと言われています。
2.2.2 反抗性愛着障害
- 特徴: 他者に対して攻撃的であったり、反抗的であったりします。人間関係が不安定で、信頼関係を築きにくいです。
- 原因: 親が虐待的であったり、子供に対して一貫性のない行動をとったりする場合に起こりやすいと言われています。
2.2.3 無秩序・無視障害
- 特徴: 他者との境界線が曖昧で、愛着の対象に執着したり、コントロールしようとしたりします。感情の起伏が激しく、自己肯定感が低い傾向があります。
- 原因: 親が子供のニーズに応えることができなかったり、子供の感情的なニーズを無視したりする場合に起こりやすいと言われています。
2.2.4 愛着障害が引き起こす心理的・社会的影響
愛着障害は、人間関係の困難、不安や抑うつ、自己肯定感の低さ、依存症などの心理的な問題を引き起こす可能性があります。また、対人関係のトラブルや仕事上の問題など、社会的な問題を引き起こすこともあります。
2.3 ケーススタディ
ケース1: 幼少期に両親の離婚を経験し、母親から十分な愛情を受けられなかったAさん。Aさんは成人後、人間関係に不安を感じ、常に相手に愛されているのかを確かめようとする傾向があります。
ケース2: 幼少期に父親から虐待を受けていたBさん。Bさんは成人後、他人に対して攻撃的になり、人間関係が不安定です。
ケース3: 幼少期に両親から無視されて育ったCさん。Cさんは成人後、自己肯定感が低く、他者との境界線が曖昧で、人間関係に依存しやすい傾向があります。
これらのケーススタディを通して、愛着スタイルがどのように個人の人生に影響を与えるのか、愛着障害がどのような心理的・社会的影響を及ぼすのかを理解することができます。
この講座では、愛着スタイルと愛着障害に関する理解を深め、ACTの枠組みを用いて、これらの問題に対処するための実践的なスキルを習得します。
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