交流分析は、複雑な人間関係やコミュニケーションを、シンプルで分かりやすいモデルを用いて理解しようとするアプローチです。この章では、交流分析の基礎となる4つの重要な概念、エゴステート、トランザクション、ゲーム、スクリプト について解説していきます。これらの概念を学ぶことで、自分自身の行動パターンや、周囲の人々とのコミュニケーションパターンを分析し、より円滑な人間関係を築くためのヒントが見えてくるでしょう。
1.2.1 エゴステート: あなたの心の中にいる3つの「私」
エゴステートとは、「心の状態」を指し、私たちの思考、感情、行動パターンを決定づける、人格の要素です。交流分析では、誰もが以下の3つのエゴステートを持っていると考えられています。
1. 親エゴステート (Parent)
- 私たちが幼少期に、主に両親や周囲の大人たちから受け継いだ価値観、規範、道徳観、偏見などを反映した状態。
- 指示的であったり、批判的であったり、保護的であったり、 nurturing な側面も持ち合わせています。
- 例:「ちゃんとしなさい」「頑張りなさい」「かわいそうに、私がやってあげる」
2. 大人エゴステート (Adult)
- 現実を客観的に捉え、冷静に判断し、論理的に思考する状態。
- 問題解決や意思決定など、状況に最も適した行動を選択することに焦点を当てています。
- 例:「この問題はどう解決しようか?」「選択肢をいくつか挙げてみよう」
3. 子供エゴステート (Child)
- 幼少期に経験した感情、欲求、衝動、自由奔放さ、創造性を反映した状態。
- 純粋な喜び、好奇心、無邪気さ、そして、怒り、恐怖、悲しみといった感情を率直に表現します。
- 例:「わーい、楽しそう!」「やりたくない!怖い!」
重要なのは、どのエゴステートが良い悪いということではなく、状況に応じて、どのエゴステートが最も適切かを判断し、柔軟に使いこなせるようになることです。
1.2.2 トランザクション: あなたと私の「心のキャッチボール」
トランザクションとは、人と人との間で行われるコミュニケーションの最小単位を指し、エゴステートとエゴステートのやりとりとして表現されます。
1. 補完的トランザクション (Complementary Transaction)
- 相手のエゴステートと、自分のエゴステートが、期待通りに噛み合っている状態。コミュニケーションがスムーズに進みます。
- 例:「今日は何時に帰ってくるの?」(大人→大人)「7時頃になると思うよ」(大人→大人)
2. 交差するトランザクション (Crossed Transaction)
- 相手のエゴステートと、自分のエゴステートが、噛み合っていない状態。コミュニケーションが途切れやすくなります。
- 例:「もっとしっかりしなさい!」(親→子供)「うるさい!ほっといてよ!」(子供→親)
3. 隠れたトランザクション (Ulterior Transaction)
- 表面上は大人同士のやり取りに見えても、実際には、異なるエゴステートが関わっている状態。複雑なコミュニケーションを生み出す可能性があります。
- 例:「この仕事、君には無理だろうね」(大人→大人)「いえ、私にだってできます!」(子供→親)
1.2.3 ゲーム: 無意識に繰り返される、コミュニケーションの「罠」
ゲームとは、繰り返し行われる、特定のパターンを持つコミュニケーションで、最終的には、両者にとって不快な結果をもたらすものを指します。
- ゲームの定義: 無意識に繰り返される、非生産的なコミュニケーションパターン。
- ゲームの構造:
- 特定の役割(被害者、迫害者、救済者など)
- 隠された目的(優位性を示す、注目を集める、責任を回避するなど)
- 不快な結末(罪悪感、怒り、失望感など)
- 例: 「なぜいつも私を怒らせるの?」ゲーム
1.2.4 スクリプト: あなたの人生を導く「無意識の脚本」
スクリプトとは、幼少期の経験や、親や周囲の人々からの影響によって形成される、「人生のシナリオ」のようなものです。
- スクリプトの定義: 幼少期に形成される、無意識の人生計画。
- スクリプトの形成過程: 親の言動、周囲の環境、個人的な体験などを通して、特定の信念や行動パターンが形成される。
- 例: 「私はどうせ成功しない」というスクリプトを持っている人は、無意識のうちに、失敗するような選択を繰り返してしまう可能性があります。
まとめ:
- エゴステート、トランザクション、ゲーム、スクリプトは、交流分析における重要な基礎概念です。
- これらの概念を理解することで、自分自身のコミュニケーションパターンを分析し、より良い人間関係を築くことができるようになります。
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