女性活躍及び仕事と育児の両立支援活動の立ち上げ背景

幼少期の経験と負の連鎖の気づき

私は幼少期、母親からのネグレクトを経験し、5歳のときに両親が離婚しました。私は父方に引き取れました。

夜中に置き去りにされた記憶や、なぜか年子の弟だけ溺愛されていたこと、その弟が母親にこっそり会いにいった時「あいつは産みたくなかった」「いらない子だった」と言っていた事実を聞かれたこと、それにより「自分だけが望まれなかった」という思いは、大人になった今も心の奥深くに刻まれています。

この経験は、少年期に非行や犯罪に走るきっかけとなり、自己否定感や生きづらさを抱えながら成長しました。

社会人となり、自身も家庭を持ち、息子を授かりましたが、「この子だけは自分と同じ思いをさせたくない」と強く願ったにもかかわらず、2年足らずで離婚という結果を迎えました。

理由は、私の"愛着"が不安定だったことが全て根源でした。

愛着の問題との向き合い

この一連の経験を通じて、薄々感じていた「自分の中の問題」に向き合う必要性に迫られました。専門家のカウンセリングを通じて初めて、愛着の問題が私の人生に深く影響を与えていることを知りました。

そして、愛着の問題は個人だけの問題ではなく、機能不全家族の中で育った多くの人々が抱える課題であり、それが次の世代へと引き継がれる「負の世代間連鎖」を生み出していることを理解しました。

家族の機能不全が社会に及ぼす影響

家族は社会の最小単位であり、その機能不全は地域社会や国家全体に波及します。

愛着の問題が引き起こす心の不安定さは、うつ病や児童虐待、ネグレクトといった直接的な社会問題だけでなく、ワーキングプアや失業率の上昇、少子化、犯罪率の増加、経済成長の停滞など、多岐にわたる問題の根底にあると気づきました。

この負の連鎖は、個人レベルの課題が社会や国家レベルの課題へと拡大していく「水の波紋」のようなものだと感じました。

ボトムアップのアプローチの必要性

こうした問題を解決するには、政府や行政によるトップダウンの施策だけでは不十分です。

家族という最小単位の共同体、その中での個人の心の課題、特に愛着の問題に焦点を当てたボトムアップのアプローチが必要だと確信しました。

一見「普通」に見える家庭でも、実は多くの家族が孤独や不安、心の余裕の欠如に苦しんでおり、適切な支援が不足している現状に問題意識を持ちました。

なぜ母親の支援から始めるのか

特に、子育て中の母親が経済的・精神的に自立し、心にゆとりを持てる環境が整えば、子どもや家庭、地域全体にポジティブな変化がもたらされると考えました。

親の生きづらさが、知らず知らずのうちに子どもに影響を与える。私が経験したように、母親が孤独や不安で心の余裕を失うと、その影響は子どもや家庭全体に及びます。

母親が安心して自分らしく生きられる環境がなければ、子どもも安心して育つことができません。逆に、母親が安心して生きられる社会は、子どもたちが健やかに成長し、地域全体が活性化する社会に繋がると確信しています。

活動の開始とミッション

この信念のもと、2015年辺りに「機能不全家族の負の世代間連鎖を断ち切る」ことをミッションに掲げ、手さぐりで活動を開始しました。

その決意を強く後押ししたのは、2006年の痛ましい事件です。5歳の男児がネグレクトと貧困の中で孤独に亡くなった事実は、私の幼少期の傷をフラッシュバックさせ、「こんな悲劇を二度と繰り返してはならない」と心に誓いました。

この事件の詳細は以下の動画でご覧ください。

多くの困難や試行錯誤を経て、LSH技術研究所を立ち上げ、子育て中の女性が「子どものそばで」「短時間で」「やりがいのある仕事」を得られるよう、地域の小規模事業者や団体と連携した支援を展開しています。

具体的な支援内容

具体的には、キャリア整理ワークショップを通じて母親が自身の価値や強みを再発見し、地域企業とのマッチングや在宅スキルの習得を通じて経済的・精神的な自立を支援しています。

私たちの活動は、母親が心にゆとりを持ち、自信を取り戻すことで、家族の中に安全と安定の土台を築くことを目指しています。

目指す未来:好循環の社会

家族が「自分らしさ」を表現し、互いに支え合う共同体感覚を育むことで、負の連鎖を好循環に変えていく。そして、その好循環が地域社会や日本全体に広がり、誰もが安心して生きられる社会を築く一歩となることを願っています。

母親が安心して生きられる社会は、子どもたちが安心して育ち、地域が活性化する社会に繋がる。この信念を胸に、私たちは一歩ずつ、機能不全家族の負の世代間連鎖に終止符を打つための活動を続けていきます。

この活動が、少しでも地域の皆様の力になり、誰もが「自分らしく」生きられる社会を築くことに貢献できたら幸いです。